top of page

令和元年9月新見市豪雨災害支援活動報告(2019/9/5 ~ 2022/3/20)

新見市令和元年9月集中豪雨災害等の概略

・2019年9月3日、岡山県北部を中心に、1時間あたり120ミリの局地的な集中豪雨が観測されました。特に新見市は、同日19時までに120ミリの雨が降り、岡山県気象台は記録的短時間大雨情報を出すに至りました。

 

・9月20日までの被災等の状況は、重症(骨折)1名、全壊1棟、床上浸水70棟、床下浸水210棟、公共施設(保育所の床上浸水、小学校の階段法面崩壊、公園の土砂流入等)の被害、配水管破損による断水16戸、国道や県道、市道の通行止め、それによる7つの孤立地域が出るなど、9月3日22時の時点で6つの指定避難所が設置されました。

 

 

ニーズ調査

・ヤヒロラボでは、ブルーシート等で応急措置が取られている家庭を中心に訪問しました。その結果、ボランティアセンターに依頼していない家庭のニーズを聞き取り、復旧作業を行う必要性がわかりました。

・最初の訪問時に「新見公立大学のボランティアチームです」と伝えると、それまでこわばっていた住民の方々の表情が笑顔に変わりました。これは新見公立大学が約40年間かけて新見市の中で受容され、信用・信頼関係を築いてきたからこそであると実感しました。災害時、不安になっている被災者にとって、信頼できる機関や団体が「地元に」存在することの大切さを再確認しました(災害時には盗難や詐欺も横行するため)。

 

・発災翌日から天候は回復し、一方で気温が非常に高くなったため、汚泥は一気に乾燥して汚砂へと変わっていきました。水害の際の汚泥は下水道やし尿槽の汚水等が逆流して汚染されていることが多いため、これらの汚砂がレジオネラ菌等を含んでいて、風で舞い上がった土埃が口に入った場合、呼吸器系の感染症にかかるという水害の二次被害も予測されます。

IMG_9733.JPG

 

 

寄付活動

・災害現場で活動しているボランティアたちのほとんどが、気温の上昇から暑くてマスクを外してしまっていました。そこで、ヤヒロラボでは、呼吸のしやすい「排気弁付きの防塵マスク(N95)」の寄付をSNS上で全国に向けて募り、690枚を新見市社会福祉協議会に、564枚を民間の災害ボランティアチームや地域住民に譲渡させていただきました。

IMG_9858.JPG

・災害翌日から気温が33度から36度と非常に高温となりました。そのため、ボランティアたちも予想以上に飲料水を必要としました。このタイミングで、東日本大震災以降、災害支援活動に取り組む音楽アーティスト、MAN WITH A MISSIONのトーキョータナカ氏が中心となって活動する災害支援プロジェクト「#サポウィズ」から、飲料水1万本の寄付を受けました。ヤヒロラボは、この飲料水を新見市内の各被災地で活動にあたるボランティアたち、自宅の復旧作業を自力で取り組む家庭(実質的に一人暮らしの高齢者宅中心)に配布しました。

・新見市内の2店の飲食店で冷蔵庫や冷凍庫等の家電が使用不可能となったため、「#サポウィズ」から、同プロジェクトが展開する家電支援制度を紹介していただき、廃棄となった冷蔵庫と冷凍庫と同等の新品を寄付する際のアテンドを行いました。

IMG_0233.JPG

・社協等にボランティアのニーズを調査し、ゴム手袋を60セット、土嚢袋は充足していたがゴミ袋が足りなかったため90リットルのゴミ袋を300枚寄付しました。その他、経口飲料水48本、塩飴100袋、タオル100枚を同時に社協へ寄付しました。

IMG_9872.JPG

 

 

災害支援活動

乳幼児が利用する施設に関する支援活動

・発災から約1週間後、A保育所に幼児を預けている保護者の数名から、「最近、子どもが熱を出した」とか「子どもが嘔吐した」、「子どもが下痢をした」という話を偶然立て続けに聞く機会があったため、保育所を訪問し、所長に相談しました。A保育所は園内の建物が床上10cmの浸水被害を受けましたが、全ての部屋において消毒が十分に行われていました。ただ、保育所の横の公園に放置されている汚泥が災害翌日からの酷暑で乾燥し、その砂を吸ってしまっているかもしれないとの情報を得ました。そこで、A保育所の横の公園の通路に溜まった汚泥や汚砂と、その通路に沿った水路に堆積した汚泥の除去作業を行いました。汚砂は作業で舞い上がって保育所の方に流れないように、水で濡らしながら除去しました。

・上記の件についてNHK(名越章浩解説委員)から取材を受け、年末のニュース番組で報道されたこともあり、その後、市をはじめとする多くの協力を得られて、復旧が迅速に進みました。

 

・A保育所の保護者から、B園でも体調を崩す子どもがいるとの情報を得たため、B園を訪問し、B園の園長と一緒に調査しました。B園は園庭の一部が浸水被害にありましたが、市がきれいな土で全てを覆ったため、復旧作業が完了していました。しかし、保育所前の駐車場に汚泥が乾燥した汚砂が一面を覆っており、また、駐車場周辺の側溝に汚泥が堆積していました。この汚砂を水で濡らしながら除去し、さらに、B園を囲むフェンスに大量の泥が付着し、固まっていたため、全て除去しました。

IMG_9686.jpg
IMG_0579.JPEG
!5c.jpg

・当初は業者がC公園の汚泥を撤去する予定でしたが、被災現場が多すぎて業者の対応が追いつかないため、そのまま放置されていました。数ヵ月経過して汚泥の山が固くなり、子どもたちが汚い土の山に登って遊んでいるので心配だという住民からの相談を受け、公園の地区の公民館長にお願いして市と業者と話し合っていただき、その汚泥の山を撤去する作業に取り組みました。

 

・山肌が豪雨によって崩れて、こぶし大の石が大量に高齢者宅の庭や、その周辺の生活用水に流れ込んだため、土砂を撤去するとともに、家屋を囲むように止水用土嚢を配置しました。

IMG_1301.JPEG
IMG_3215.jpeg

・家の庭横の沢が豪雨時の鉄砲水でえぐられ、庭が浸食されていき、庭に立つ小屋が崩れる危険性がある世帯からの依頼がありました。業者対応が2ヵ月後であり、6月以降の梅雨と台風がさらに庭を浸食した場合、小屋が崩れる可能性が高く、住人から、業者が来るまでの応急処置をしてほしいとニーズが寄せられ、土嚢袋で応急的に壁を作り、対応しました。

!26.jpg

・用水組合からの依頼で、川から水を引き込む水路が土砂で埋まり、水が流れなくなった部分の復旧作業に取り組みました。被災現場は川の小さな支流であり、重機が入ることができないことや平均年齢70歳の用水組合のメンバーが土砂を除去するには非常に状況が厳しいことから支援のニーズが寄せられました。この水路は町の下流にある田畑の生命線なので、早急に土砂の除去作業を行いました。

!IMG_5342.JPG

・高齢者宅の庭に流入した汚泥の除去依頼が12件あり、それぞれ1日ずつ対応しました。これらの汚泥除去作業に、述べ115人が取り組みました。

・田畑の近くの側溝の土砂の撤去作業中、田んぼと畑のあぜに肩を落として座っていた高齢者を見かけたので声をかけてみると、田んぼに汚泥が流れ込み、翌日収穫予定の野菜や、1カ月後に控えていた稲が全滅したと話してくださいました。高齢の農業従事者は、個人で対応するには不可能で、田畑が大きく被災したにも関わらずボランティア派遣を断られ、農業を廃業しようと考えているということでした。そこでヤヒロラボでは、翌週より述べ52人を動員して7回の汚泥除去作業に取り組みました。復旧した田んぼは、翌年無事に稲の苗を植えることができ、収穫することができました。

!!IMG_5494.JPEG
!!IMG_4024 (1).jpg

 

 

災害による二次的な被害への対応 / 防災・減災への取り組み

 

・雨の度に側溝から生活排水を含む汚水が道路に溢れ返り、衛生的にとても不安だという相談を受け、災害時に側溝に70センチほど溜まった汚泥や土砂を取り除く作業を行いました。特に側溝蓋やグレーチング下、道路の下を横断する水路はトンネルになっているため手付かずの状態となり、大きな石が水の流れをせき止めて、汚水を道路に溢れさせていました。トンネルの中に潜り、ヘッドライトを照らしながらの辛い環境での作業に手間取ったものの、泥や石の撤去を行い、その結果、いつも大雨の度に溢れていた側溝は、2021年8月14日の大雨の際にも、溢れ出すまでは10センチほど余裕があったと近隣住民から喜びの連絡を受けました。

・長年放置されたまま固まってしまった側溝蓋やグレーチングは開けることができず、中にもぐることができず、困っていましたが、ELLEGARDENの高橋宏貴氏からの支援金提供を受け、固くて重い側溝の蓋を持ち上げる道具を購入し、発災から2年間手付かずだった土砂の撤去作業に入ることができました。

!34.jpg
IMG_6076.jpg

・小さな川の側の並木からの落ち葉は、通常は水に押し流されて、大きな高梁川に到達しますが、災害土砂が落ち葉の流れをせき止め、そこに生活排水が流れ込むことによってヘドロ化し、悪臭を放つようになっていました。近隣に住む高齢の住民から、家にも悪臭が充満して困っているという相談を受け、土砂と一緒にヘドロも除去する作業をし、悪臭を取り除きました。

!20.jpg

 

 

市民や全国の支援者とのつながり

・市民から声をかけられるのは、「依頼」だけでなく、活動中に飲み物やお菓子などの「差し入れ」を持ってきてくださる方々がいたり、「とてもきれいになったよ、ありがとう」、「大学(短大)の人たちなんだね、ありがとう」と、わざわざ車を停車させてお礼を言ってくださったり、「いつも窓から見ているよ。本当にありがとうね。今日はお礼を言いに来た」と寄ってくださる手押し車の女性がいたりし、「初めて新見市の大学生であることを実感した」という他市他県出身の学生も少なくありません。

・この支援活動はSNSで全て報告しています。これは、活動に必要な物資の多くを全国の支援者からの寄付に頼る部分が大きいため、私たちには報告する義務があると考えるからです。これまでたくさんの物資や食べ物・飲料水などの差し入れや、応援の手紙やはがきを受け取ってきました。このことがまた、コロナ禍で思うように活動できないメンバーに勇気を与え、士気を上げていただいていることで、作業を気持ちよく進めることができてきました。ありがとうございます!

!21.jpg

・土嚢袋は土砂を入れて運び、大抵はそのまま土砂置き場に袋のまま置いて業者対応に頼ることが一般的ですが、その一連の流れのない当活動では、土砂置き場で土嚢袋から土砂を出し、袋を再利用しています。耐久性の面で再利用にも限界があり、袋も安くはないのですが、#サポウィズ/トーキョータナカ氏、ELLEGARDEN/高橋宏貴氏、SPREAD/TAKUYA氏、チキチキジョニー/石原祐美子氏から合計40000袋もの土嚢袋の提供を受けました。また、GESUMETARU/駆弐氏から大量の土嚢袋スタンドの提供を受けました。

IMG_7443.jpg

・日本で最も漬物のシェアを誇る岩下食品の岩下和了社長の全面的協力を得て、岩下食品の看板商品である「岩下の新生姜」のロゴ入りのラバーバンドをヤヒロラボとのコラボレーションで制作、販売して全国から寄付を募り、新見市内での被災地支援の資金を捻出しました。

PhotoStreamsData_IMG_1525.JPG

・新見公立大学の学生にも床上浸水の被害が出ました。ヤヒロラボは、ロックバンドELLEGARDENの高橋宏貴氏と共に、東日本大震災震災遺児孤児支援活動を推進してきました。その経緯から、高橋氏から被災学生への物資提供を受け、新品の電化製品や靴等の寄付をしていただきました。

IMG_5253.JPG

・アーティスト、ミュージシャン、お笑い芸人の方々からも、実際に現場で一緒に汗を流していただいたり、支援金を託していただいたり、多くの支援をしていただきました。このような方々からのご支援は、単純に経済的、労力的に助けていただいただけでなく、我々ボランティアチームの社会的信頼度を高めていただいたという点でも、大きく支えていただきました。ありがとうございます!

IMG_7498.jpg
IMG_6349.jpg

この活動は2022年3月現在も継続中です。

.

.​

bottom of page